研究紹介:ポリマーとダイヤモンドカーボンフィルム(DLC)
との複合体での材料物性、力学物性、破壊挙動の研究
by 坪根 大
近年、食品包装や機械部品、医療用器材などとしてポリマー(高分子)材料の需要は
高まり続け、同時に更なる高性能化が求められています。高性能化の手段として現在注目
されているものの一つに、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)フィルムのポリマー基板上
へのコーティングによる表面改質が挙げられます。
DLCフィルムは、その名が示すようにダイヤモンドの立体的なsp3結合と、グラファイト
の平面的なsp2結合を併せ持つ非晶質炭素薄膜です。硬さや摺動性を初めとした優れた
物性を有し、切削工具や金型などにコーティングされ、その性能を高めるために使われて
きましたが、最近ではポリマー材料へのコーティングも注目され始めてきました。
これにより、例えば非常に高いガス遮断性能を持ったPETボトルを作ることができます。
ビールやワインなどの繊細な飲料の充填用途から、再充填が可能なリサイクルボトル
システムまで、ポリマー材料の応用範囲のさらなる拡大が、このような高機能化により
期待されます。
DLCフィルムをポリマー材料と複合して活用するにあたり、比較的柔軟なポリマー母材
の変形に対し、コーティングされた硬質DLCフィルムの破壊や剥離が問題となり、期待
される高機能性に与える影響を調べることが急務です。
そこで本研究では、薄膜のDLCをコーティングしたポリマー材料に対し引張変形を与えた
際、薄膜がどのように破壊や剥離を起こすかに焦点をあてます。DLCとポリマーの複合体と
しての性能の力学的応答を解析することにより、本複合体の実用化に拍車をかけます。