研究紹介: 物理ゲルの構造解析と熱物性
                           粘弾性挙動の解析
 

                          by 高田 賢介

 

日常生活において汎用材料として多く使われている高分子は、一本の長い

鎖として存在しています。高分子はそのままでは通常1次元あるいは2次

元の鎖ですが、中には下図のように何らかの分子間相互作用(共有結合、

水素結合、結晶、絡まりなど)のために高分子鎖同士が3次元のネットワ

ークを作るものがあります。

 

 

 

 

 

 

                                  
                               Fig 1 高分子の3次元架橋ゲルと結晶性


そのような高分子を溶媒(良溶媒)に溶かすと、多量の溶媒成分を含んだ

網目構造の高分子ゲルを形成します。現在、私は結晶性により“架橋”し

ているこのような物理ゲルの物性に取り組んでいます。プラスチック容器・

袋やPETボトルのキャップなどに使われているポリエチレン(PE)やポリ

プロピレン(PP)に代表される結晶性高分子では、その結晶構造によって

それぞれの高分子鎖が架橋されたゲルとなるわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキスト ボックス: Fig1 高分子ゲルの構造
 


本研究では結晶性高分子であるポリプロピレン(アイソタクチック・シン

ジオタクチック)の分子構造の違い(上図2, 3)、さらには結晶構造がコン

フォメーションや熱履歴等により敏感に変わることに着目し、溶質の濃度や

溶媒を変化させることによって、高分子ゲルの構造変化、熱物性や力学物性

などについてX線回折、赤外分光光度計、AFM、光学顕微鏡、SEM、引張

試験機、粘弾性測定機などで解析しています。