研究紹介:異なる疎水鎖長を有するペプチド両親媒性分子水溶液における自己集合構造のレオロジーとシミュレーション   

                             by 大塚 貴博 

両親媒性分子とは水になじみやすい親水性を有する部分と水をはじきやすい疎水性をゆする部分を合わせ持つ分子のことをさします。両親媒性分子は面白いことに水の中へ入れると分子同士が集まり(自己集合が起こり)ナノレベルにおける構造が変化します。この性質を有するために、せっけんや化粧品などに使われ別名界面活性剤とも呼ばれています。その中でも私が取り扱っているペプチド両親媒性分子は親水基にペプチド、疎水基にアルキル鎖をもつブロックコポリマーです。先行研究では自己集合構造には球状ミセルとひも状ミセルがありそのふたつの自己集合構造を転移する領域が存在し、それに伴って力学物性や分子の立体構造が変化することが解明されています。

具体的には、自己集合構造のメソスケールでは球状ミセルからひも状ミセル、溶液のマクロスケールでは水状態のゾルから固体状のゲル、ペプチド分子鎖のミクロスケールではらせん状のαへリックスから直線状のβシートの転移がそれぞれ起こることが解明されています。このミクロ・メソ・マクロスケールの転移は同時に起こることが知られています。タンパク質が過剰にαへリックスからβシートになることで起きるアルツハイマー病や狂牛病といったプリオン病の原因解明にもこの研究がモデル化という意味で役立つのではないかと考えられます。

私は疎水基の長さ(疎水鎖長)の異なるペプチド両親媒性分子のブレンドを行い3つのスケールでの転移に与える影響の解明をするため、分子シミュレーションとレオロジー測定を行いたいと考えています。