研究紹介:表面処理によるPP表面へのバリア性DLC膜形成技術の開発   

                             by 田代 裕樹 

ポリプロピレン(PP)は、日常生活で最もよく使用されているプラスチック材料のうちの1つです。PPは軽量・柔軟性・低コストなどといった特徴があり、ケースや食品パッケージなどに幅広く使われています。

しかし、このPPはガラスやビンなどと比べると、「ガスバリア性が低い」という欠点があります。「ガスバリア性が低い」というのは、周囲の気体を遮断する能力が低く、そのためパッケージ内への酸素の進入などにより、食品が腐食してしまう、ということです(図1)。この低ガスバリア性を克服することで、PPの用途がさらに広がることが期待できます。

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図1 低ガスバリア性による食品の酸化劣化

近年、高分子材料のガスバリア性を向上させる方法として、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)を表面に薄くコーティングする技術が盛んになっています。このDLCとは、ダイヤモンド構造とグラファイト構造を併せ持った構造をしており、高硬度・高ガスバリア性といった優れた特徴を持っています(図2)。

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図2 DLCの構造


しかし、今回私が着目しているPPはDLCとの相性が悪いことが分かってきています。 そこで、本研究では、PPとDLCの接着性を高め、さらにガスバリア性を向上させるために、PP表面の改質などの様々な工夫を行っております(図3)。

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図3 PPとDLCの低密着性