研究紹介:高分子材料の誘電率測定   

                             by 森 研人 

 

高分子材料に帯電した物体を近づけると、材料内で電気双極子が整列します。この現象を分極と呼んでいますが、分極の度合いを示す値を誘電率と言います。 高分子は絶縁体であるため電気物性とは無縁だと思われがちですが、実は高分子の誘電率を測定することで様々な性質が分かります。 力学物性を測定するだけでは分からない、高分子のガラス転移や末端間距離のゆらぎ、側鎖の回転運動などのミクロな構造の変化も誘電率を測定することで解析することができます。

ガラス転移というのは高分子の状態を決定する重要な性質の一つで、ガラス転移点を境に分子鎖のミクロブラウン運動が停止します。そのため高分子鎖は、ガラス転移点以上ではゴム状態になり、ガラス転移点以下ではガラス状態になります。 ポリ乳酸(PLA)という生分解性プラスチックが近年注目されていますが、このPLAの誘電率測定を行い、ガラス転移点における誘電率挙動を観察しています。また生分解の前後において誘電率がどのように変化し、それが力学物性と関連しているのか調べていきます。