研究紹介:細胞培養、細胞保存に向けた両親媒性化合物ゲルの粘弾性および構造解析   

                             by 麻生 明宏 

おそらく皆さん、高校時代に石鹸や合成洗剤がミセルという構造を形成すると聞いたことがあるのではないでしょうか。 石けんや合成洗剤のように、本来溶け合わない水と油を溶けるようにする性質を持つ物質を界面活性剤といいます。または両親媒性化合物と呼ばれます。

両親媒性化合物は下の図のように、1つの分子の中に水に溶けない部分(疎水基)と水に溶ける部分(親水基)を持つ化合物のことです。両親媒性化合物は油の中に水に溶けない部分を差し込んで、油の表面に水に溶ける部分を覆うような形になって、油を水に溶けるようにします。 このような自己集合構造をミセルといいます。

この自己集合構造は温度変化によって分散状態を分散→凝集→ネットワークと変化させるメカニズムが先行研究において提唱されており、 流動性のあるゾル状態から流動性のないゲル状態に転移することが確認されています。

私の研究ではこの温度に依存したゾル→ゲル転移という挙動に注目し、新規の細胞培養または細胞保存ヒドロゲル化剤の実用化に向けた研究を行っています。 具体的には、親水・疎水鎖長、親水・疎水基配列、化合物濃度をパラメータとして両親媒性化合物水溶液の濃度変化による粘弾性挙動の温度依存性を評価します。 今後は、このゾル→ゲル転移メカニズムを自己集合構造の観点から解析します。

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