研究紹介:高機能透明接着性ポリエチレンの開発

by 星田 隆

堀田研究室では「既存のポリマーに機能性を持たせよう!」という目的を

かかげています。その第一弾として私、星田が現在やっているのが

「高機能透明接着性ポリエチレンの開発」です。

ポリエチレンは耐水性や耐薬品性のみならず,電気的に安定、また成型が

容易なことから、我々の生活用品で多く用いられており、ポリプロピレンと

並んで最も良く使われる高分子マテリアルです。皆さんが普段使う買い物の

袋や、飲料用PETボトルのキャップ −これも実はポリエチレンが多いのです。

 ところで、皆さんはこのポリエチレンが接着が大変しにくい素材という

ことをご存知でしょうか。あまりにも接着不能なため、エポキシ接着剤を取り

扱う時なはポリエチレン手袋を使用するくらいなんです。しかし、ポリエチ

レンをくっつける方法がないわけではありません。現在世の中ではさまざま

方法でポリエチレンを接着可能にする試みがなされています。例えば、時々

ホームセンターなどで見かける接着剤で、パッケージに2液体容器が入って

いるもの見たことがありませんか?これは2液混合の接着剤なのですが、

その中には片方が接着剤で、もう片方が表面処理用のプライマーであることが

あります。後者のプライマーは、接着剤塗布前に被着材に塗ることによって、

表面を化学的に荒らし、接着強さを上げるためにあるんですね。この表面処理

を一般的に「プライマー処理」といいます。表面処理には他にもプラズマエッチ

ングや火炎処理というのあります。実用上はウェットになったり発熱が大き

かったり、コスト高であったりで色々な問題点があります。さらに、ポリエチレン

をしっかり接着できるのはその中でも一部の接着剤のみなのです。我々としては

ポリエチレンの長所を最大限生かしつつ、新たな性能を付加させようと考えました。

 そこで表面処理の1つとして薄膜蒸着に着目し、ダイヤモンドライクカーボン

DLC)をポリエチレンに蒸着させてみました。また、フッ素を添加したDLC

F-DLC、於:鈴木研究室もポリエチレンに蒸着させてみました。その結果、

DLC蒸着により接着性劇的に向上することがわかりました。フッ素添加量を

増やすことにより接着性は更に向上することもわかりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、DLC薄膜蒸着によりポリエチレンは茶色になってしまいますが、フッ素

添加量を増やすにつれて透明性もかなり上がりました。

 

 

 

 

 

 

        図2 F添加により透明性を増すポリエチレン上のDLC

これらのことは、DLCがポリエチレンと接着性が大変良いことを物語っています。

現在はなぜ、このような薄膜蒸着接着性向上につながったのかを調べています

これはポリエチレンのDLC表面処理により、新たな高機能化の可能性を示唆して

います。たとえばDLCF-DLC on HDPEを他の基板(金属であればステンレスなど)

につけることによって、これまで接着できなかった金属とのポリエチレン複合体

が考えられるようになるわけです。